馬の走り方~四種の基本歩法~

走る馬 乗馬・馬術

乗馬をしている人であれば、馬の四種の歩法というものを聞いたことがあるでしょう。

常歩 歩くような動き
速歩 小走りのような動き
駈歩 通常の走り方
襲歩 全力疾走

上記四種が馬の基本歩法と呼ばれ、乗馬や競馬でよく使われる走り方となります。

実はこの四種の歩法以外のもたくさんの走り方の種類があるのですが、今回は基本の四種に絞って解説をしていこうと思います。

四種の歩法

常歩 なみあし

乗馬を始めたらまず初めに行うのが【常歩】、通常は【なみあし】と呼ばれます。

4拍子で歩くようなリズムの歩き方で英語ではWalk

脚の動きは【左後脚→左前脚→右後脚→右前脚】といった順番になります。

乗馬を始めると、初めはこの常歩で歩く練習から始めることになるが、簡単なようで実は奥が深い歩法です。

活発に馬を動かすことが出来れば分速110mを超える速度で馬を動かすことができるが、多くの乗馬用の馬はのろのろと、人が歩くよりもずっとゆったり歩く。

ここで馬を活発に動かすために、騎乗者は馬に足で圧迫刺激を与えて前進するように指示を与えます。

ここで馬への指示の出し方を正しく覚えて身に付けていくことが大切です。

刺激が正しく馬に送れないと、馬がのろのろしたままであったり、反抗するような態度を示したりします。

また、常歩から次の段階の速歩に移行してしまうことも多く、常歩のまま速度を上げることは実は結構難しい。

馬が速歩に逃げないように抑えつつも、常歩では速度を上げるようにという一見矛盾するような指示を馬に上手く伝えていくテクニックが必要になってきます。

速歩 はやあし

小走りをするような脚運びの走り方が【速歩】、通常は【はやあし】と呼ばれます。

2拍子で馬体が大きく上下に揺れる場合が多いため、騎乗者は揺れを吸収するために鞍の上で鐙という足を乗せる器具を使って立ったり座ったりを繰り返す軽速歩という動きを行ったり、座ったまま揺れを吸収する正反動というものを行うことになります。

分速220m程で、英語ではtrotと呼ばれる。

脚の動きは【右後脚と左前脚が同時→左後脚と右前脚が同時】という運びとなり、基本的にはこのような対角線上の脚が同時に着地するような動きとなることが多いが、ごく稀に左右の脚が同時に着地する(右後脚と右前脚が同時→左後脚と左前脚が同時)側対歩という特殊な速歩を行う馬種もいる。

実はどんな馬種でも潜在的には側対歩を行うことが出来るようで、極限まで疲れると普段はしない側対歩が自然と出てくるといわれています。

疲れた時に側対歩が出る理由としては、側対歩の方が効率の良い歩法であり、エネルギーを節約する本能が働くからだと考えられています。

乗馬では常歩の次にこの速歩を覚えることになり、初めは馬の上下に弾むようなリズムに慣れずなかなか上手く乗りこなせない期間が続く人が多くなります。

速歩の状態で上手く足を使えるようになり、馬が上下に弾むエネルギーを前進するエネルギーに変換して前へ前へより速く進めるように出来るようになると、また次の段階へステップアップ出来るようになります。

駈歩 かけあし

3拍子で走るようなリズムの動き

駈歩はよく見る馬の走りかたで、英語ではcanterと呼ばれます。

分速は340mを超えるほどとなり、ここまでくるとだいぶ騎乗者も速度を感じるようになる。

脚の運びは【右後脚→左後脚と右前脚が同時→左前脚】というものが多く、これを左手前と呼ぶ。

左手前があるということは右手前もあり、右手前の場合は【左後脚→右後脚と左前脚が同時→右前脚】という順番になります。

多くの馬は左前脚の方を好む傾向にあるようで、肉食獣から逃げるときにまっすぐ進むよりも左右どちらかに曲がりながら逃げた方が捕まるリスクを軽減でき、その際心臓が位置している左側に曲がる方が効率的に体を動かせるためであるという説があります。

乗馬に慣れてくるとこの駈歩を出すことと、駈歩のままバランスを取ることが鬼門となっています。

馬体が大きく揺れることと、3拍子というリズムを掴みづらい動きであることがネックとなりなかなか上手く出来ずに心が折られる人も多いとか・・・

襲歩 しゅうほ

4拍子で駆ける、馬の全力疾走で、英語ではgallop

分速は1000mを超え、時速にして60km以上、ギネス記録では時速90km近い速度が出た例もあります。

脚の動きは、左手前の場合は【右後脚→左後脚→右前脚→左前脚】となります。

襲歩には交差襲歩(脚の運びを線で結ぶと、線が交差する動き)と回転襲歩(脚の動きを線で結ぶとぐるぐると円を描く)があり、前述の脚運びは交差襲歩であり、通常は交差襲歩で走る馬がほとんどです。

手前脚を変換する際や、スタートしてからスピードに乗るまでの期間に回転襲歩を行うようになっています。左手前の回転襲歩の脚の運びは【左後脚→右後脚→右前脚→左前脚】

また、特殊な襲歩として、ハーフバウンドというものがあり、速歩の項で紹介した側対歩の前後脚バージョンのような動き【両後脚が同時→両前脚が同時】になっています。

通常乗馬ではあまり行われることはなく、特殊な馬術競技や競馬で馬が走る際に襲歩で走る馬を見ることが出来ます。

その他

これらの他にも、特殊な歩法として

ピアッフェ
パッサージュ
ピルーエット
ハーフパス
レッグイールディング
などなど

基本歩法以外にも面白い馬の動きはたくさんあります。

馬術競技によって全く違う馬の動きを楽しむことが出来ますので、ぜひ色々な馬の歩法を見て、その美しさを感じてみてください。

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